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臓器提供を増やすためのすごく簡単な方法

 

■進まぬ臓器提供

 

臓器移植法施行から20年に合わせて実施された内閣府の世論調査で、自らの臓器について、約4割が「提供したい」と前向きに考えているのに対し、実際に意思表示カードなどに可否を記入しているのは約13%にとどまることが分かりました。

 

「臓器提供を増やす」というテーマは、行動経済学者にとっては、もっとも簡単なものかもしれません。

 

 

■国によって異なる臓器提供の意思

 

臓器提供の意志のある人の割合は、国によって大きな差があります。少し古いですが、2003年のヨーロッパの調査を見てみましょう。

 

オーストリア 100%

フランス 100%

ハンガリー 100%

ポーランド 100%

ポルトガル 100%

ベルギー 98%

スウェーデン 86%

オランダ 28%

イギリス 17%

ドイツ 12%

デンマーク 4%

 

ドイツとフランスでは隣国同士なのに、なぜこんなにも差があるのでしょうか?ここまで違うと国民性の問題とは言えないでしょう。

 

 

■原因は臓器提供の選択の違いだけ

 

答えは臓器移植の意思表示カードの違いにあります。臓器提供の意思が高い国のカードは「臓器提供プログラムに参加を希望しない人はチェックしてください」(オプトアウト方式)、低い国のカードは「臓器提供プログラムに参加を希望する人はチェックしてください」(オプトイン方式)と記載されていたのです。

 

臓器提供の可否は考え出すとなかなか結論が出ない類の問題です。私たちは複雑な判断を求められると、何もしないことを選択しがちです。つまりはじめの設定(デフォルト/初期値=標準設定)に従うのです。

 

臓器移植の例で言うと、チェックするよりもしないほうが楽なので、結果的にオプトアウト方式のほうが臓器提供を選ぶことになるのです。

 

最初に提示された環境設定がそのまま選ばれやすいのは、楽だからということのほかに、それがオススメなのだろうとみなされることもあります。「この人はプロとしてこれを勧めるのだろう。これがいいに違いない」と考えてしまい、あえて変更することは避けるようになります。

 

 

■すべては初期設定次第?

 

不要なメルマガや雑誌の購読料、申し込んだ記憶すら曖昧なカードの手数料、ほとんど行かないジムの会員料など、キャンセルするのが面倒で初期設定のままのものは皆さんにも覚えがあるでしょう。

 

マーケティング面で言えば、オプション機能を追加してもらうよりも、最初からフルオプションの状態から不要なオプションを外してもらうほうが、最終的に選ばれるオプション機能は多くなるはずです。必要なものをいちいち追加したり外すのが面倒だからです。パソコンの設定で、必要な機能をいちいち追加していく場合と、不必要な機能を外す場合では、後者のほうがおそらく搭載される機能が何割か多いはずです。

 

このように初期設定はその後の私たちの振る舞いに大きな影響を与えます。何か新しいものを申し込む際には、「変えたがらない」という人間の性質を踏まえた上でその後の状況を推測して判断することが求められます。

 

もちろん、臓器提供のように、初期設定を工夫することで望ましい状態を作り出すこともできます。行動経済学者で2017年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラーは、「望ましい結果を得るためのちょっとした工夫」をナッジと呼んでいますが、初期設定はナッジとして機能します。

 

メタボ気味でジムで運動する必要があるのなら、入会金の支払いは自分を縛る効果があるでしょう。カードで散在する恐れがあるのなら、最初から利用限度額を低く設定しておけばよいかもしれません。貯蓄をするなら定期預金がいいでしょう。

 

 

【参考】

『お金と感情と意思決定の白熱教室』ダン・アリエリー著 早川書房

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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