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知財戦略のありかた③(特許化しても意味がない理由)

■特許出願すると模倣される

 

自社が開発した技術を特許化するには、特許を申請する際に「我が社はこのような技術を特許として申請していますよ」という具合にオープンにしなければいけません。まず、ここで模倣されるリスクが生じます。

 

さらに日本企業の場合は、日本国内で特許出願をして、海外では出願しないということが多いです。よって、日本企業が日本国内で出願し公開されている技術内容を海外企業が真似することは可能ですし、実際にそうして使い始めれば海外では技術が公知なものとなってしまいます。公知なものに対しては、もはや特許という独占的な権利を主張することはできません。このような形で日本企業が開発した技術が新興国企業に伝播していった可能性が指摘されています。

 

 

■製品が普及した頃には特許が切れている

 

技術開発から製品化までは10年はかかると言われており、その製品が世界市場で大量普及する兆しが見えるまでにはさらに5年以上はかかります。一方、特許の有効期間は出願してから20年です。よって、世界市場で普及した頃には、特許が切れかけている状態であり、特許による利益の独占は極めて短期間にとどまります。

 

 

■開発するよりラインセンスを受けたほうが楽

 

特許技術を他社が利用する(ライセンスを受ける)には、開発企業にラインセンス料(特許使用料)を払わなければなりません。知財戦略のねらいの1つとして「他社からのライセンス収入の獲得」がよく言われてきましたが、ライセンス収入を取れても新興国企業との競争にはほとんど有利には作用しません。

 

技術がない新興国企業からすれば、先進国企業への利用ラインセンス料の支払い負担が重く、これが大きなコストアップ要因となると思うかもしれません。しかしながら、実際にはライセンス料の負担は工場出荷額の3%から5%に過ぎません。つまりほんの数パーセントのコストアップにしかなっていないのです。

 

逆に言えば、技術開発した先進国企業が圧倒的な特許の数を誇っても、製品全体のコストを数パーセント下げるだけの効果しかないということです。新興国にとっては、莫大な時間や労力、資金を使って自ら技術開発をすることなく、先進国企業からのライセンスを受けても、ほんの少しのコストアップにつながるだけなのです。

 

さらに冒頭で触れたように日本企業の技術を知った新興国企業はその一部を発展させます。そして、その技術を利用したい日本企業に対しライセンス料を要求することがあります。つまりクロスライセンス(特許技術の相互利用)に持ち込むことによっても日本企業がもともと開発した技術に対するライセンス料を無効化することができてしまっているのです。

 

 

【参考】

『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版』小川紘一著 翔泳社;

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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