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知財戦略のありかた④(イノベーター企業でも儲からない理由)

今回は、なぜ90年代から技術で世界をリードした日本企業が瞬く間に凋落したかを考えてみます。

 

 

■スマイルカーブ化するハイテク製品

 

パソコンでは90年代末からスマイルカーブと呼ばれる現象が指摘されていました。これは業界バリューチェーン(価値連鎖)の川上の開発や部品製造や、川下のメンテナンス・アフターサービス、コンサルティングは儲かるが、真ん中の完成品の組立・製造・販売は儲からないというものです。


スマイルカーブ  

完成品の組立・製造・販売が儲からない理由は、製品の構造(製品アーキテクチャ)に求められるのが一般的な考え方です。パソコンなどのハイテク製品は、メーカー1社(あるいは1つの系列グループ)での開発は困難です。よって、製品システム全体の仕組みを規定しオープンにした上で、パート(モジュール)に分け、様々なサプライヤー(モジュールメーカー)にモジュールを開発させるというスタイルを採ります。たとえばOSのマイクロソフトやCPUのインテルなどです。

 

製品システムの構造はオープンになっていますし、有力なモジュールメーカーは世界中の完成品メーカーにモジュールを供給しますから、参入が激化し、完成品の製造や販売はやがて儲からなくなります。

 

一方、有力なモジュールメーカーは、モジュールの分野で独占的な地位を占めるので、高い収益を上げることができます。その際に製品システム全体の組立の方の設計図(リファレンスデザインあるいはシステム統合技術)が、モジュールメーカーから新興国の完成品メーカーに提供されることが多く、参入激化を後押ししています。

 

■ソフトウエアにより熟練技術が無効に?

 

デジタル家電分野でも同様なことが(しかもパソコンの場合よりも急速に)起こりました。

さらに有力なモジュールを開発しても、液晶パネルやリチウムイオン電池などのように瞬く間にシェアを落としてしまうという事態が見られるのが、パソコン以降のエレクトロニクス分野の特徴です。

 

現在のエレクトロニクス製品にはソフトウエアが組み込まれており、微調整はソフトウエアによって行われています。以前は部品間の微妙な調整は熟練した技術者の技術が必要でしたが、現在では多くの場合、組み込みソフトウエアによって可能となっています。つまり熟練技術がない新興国企業でもそれなりの品質の製品が作れてしまうのです。

 

以上のように、オープン化した製品アーキテクチャ、モジュールやシステム統合技術の大量普及、組み込みソフトウエアにより、せっかく高い技術を開発したイノベーター企業であっても、もうけを独占することができなくなっているのです。

 

 

【参考】

『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版』小川紘一著 翔泳社;

『イノベーションと競争優位』榊原清則・香山晋編著 NTT出版

MOT[技術経営]入門』延岡健太郎著 日本経済新聞社

 

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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