選択肢が増えると楽しみが減る②
前回は「少なさすぎる選択肢は問題だが、多すぎる選択肢もまた問題である」ということを取り上げました。選択肢が増えると楽しみが減る場合があるのです。では、なぜそのようなことになってしまうのでしょうか?
■機会費用の存在
選択肢が増えると楽しみが減る大きな理由の1つに、機会費用の問題があります。機会費用とは「あるモノを手に入れるために失った利益」のことです。
ある学生が休日に家で何もせずゴロゴロしていたとします。使ったお金はゼロですが、この場合、コストはゼロと言えるでしょうか?彼はアルバイトをすれば日給1万円稼げたかもしれません。1万円を犠牲にしたのですから、彼の休日の過ごし方には機会費用1万円というコストがかかっていることになります。
たとえば、週末の過ごし方で次の6つが浮かんだとします。
① 素敵なレストランで食事する
② 食事は手軽に済ませて映画鑑賞する
③ 友人とテニスする
④ 自宅で野球観戦する
⑤ 洋服を買いに行く
時間の都合上、1つしか選べないとします。結局は最善のものを1つ選ぶかもしれませんが、それぞれに良さががあり、絞ることは難しいことです。言い換えれば、1つの選択肢を選ぶということは、他のものの良さを享受することを犠牲にするということ、つまり機会費用が生じることを意味します。
■選択肢が多いと機会費用が大きくなり、選んだ選択肢の満足度が下がる
私たちには、いくつかの商品の中から1つを選んで購買した後、「あっちにしておけば良かったな」などと何らかの後悔を感じることが指摘されています。これを認知的不協和といいます。休日の過ごし方の選択でも同じことが生じます。
1つのことを選択しても、このような機会費用を認識するとなると、候補となる選択肢が多ければ多いほど、心理的な機会費用も大きく感じることになります。しかも心理的な機会費用が大きくなればなるほど最終的に選んだ選択肢の満足度も下がってしまうのです。
すべての面で最善な選択肢などそうそうあるものではありません。報酬が良く、やりがいがあって、休日も多く取れる仕事などほとんどないでしょう。私たちの選択はトレードオフ(一方が立てば一方が立たずの関係)に必ず直面し不安やストレスを感じるわけですが、選択肢が増えるほどトレードオフに直面することになるのです。
【参考】
『購買選択の心理学』バリー・シュワルツ著 ダイレクト出版