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顧客価値を考える⑦(ジョブ理論1)

■顧客はなぜその商品を買うのか?

 

顧客は商品そのものが欲しいわけではなく、商品から得られる便益がほしいのだということは以前から言われてきました。

 

マーケティングの初期の学者であるセオドア・レビットの名言に、「顧客はドリルではなく、穴を欲している」というものがあります。これは、商品そのものではなく、顧客のニーズに着目する必要性を訴えるものとして、つとに有名です。

 

マーケティングでは、ニーズとは「必要性」であり、ウォンツとは「欲求」」であると定義されます。

 

たとえば、「夕方、お腹がすいたので空腹を満たしたい(ニーズ)。だからコンビニで菓子パンを買う(ウォンツ)。」といった具合です。

 

さて、さらっと読めば何も違和感がない内容ですが、よく考えるときちんとした説明ではないことがわかるでしょうか。空腹を満たしたいのなら、別に菓子パンでなくても弁当でもインスタント食品でもおにぎりでもなんでもよいはずです。他のものではなく、菓子パンを選ぶ何らかの理由があるはずです。

 

ニーズは、顧客にアンケートで聞けばわかりますし、菓子パンの販売実績はPOSデータで把握できます。しかしながら、ニーズとウォンツの間には隔たりがあります。商品を売るためには、マーケターが「なぜ顧客はその商品を買うのか」理解する必要がありますが、顧客へのヒアリングやPOSデータでは、顧客がその商品を買う真の理由がわからないのです。

 

 

■ジョブ理論

 

ハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授は、顧客の便益を考える上でより包括的なコンセプトであるジョブ理論を提唱しています。最大のメッセージは、「顧客は自らのジョブを片付けるために商品を雇う」ということです。

 

・ジョブ(顧客が片付けるべき用事)とは、特定の状況で人あるいは人の集まりが追求する進歩である。

・ジョブは機能面だけでとらえることはできない。社会的および感情的側面も重要であり、むしろこちらのほうが機能面より強く作用する場合もある。

・ジョブは日々の生活の中で発生するので、その文脈を説明する「状況」が定義の中心にくる。イノベーションを生むのに不可欠な要素は、顧客の特性でもプロダクトの属性でも新しいテクノロジーでもトレンドでもなく、「状況」である。

 

顧客のジョブを正しくとらえるためには、顧客へのヒアリングやデータ解析ではなく、エスノグラフィー(顧客の行動観察調査)が必要になります。

 

先ほどの「コンビニで菓子パンを買う」という行為をとってみても、買う前から買ったあとまで行動観察をすると「空腹である」「就業時間中で早く食事を済ませたい」「仕事をしながら食事したい」「近くにコンビニがある」「本当は菓子パンは飽きているので食べたくないが仕方がない」「お金をかけたくない」など様々な背景が観察できるはずで、その中に顧客価値提案の新たなヒントがあるのです。

 

 

【参考】

『ジョブ理論』クレイトン M クリステンセン、タディ ホール、カレン ディロン著 ハーパーコリンズ・ ジャパン

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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