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「成長戦略は待ったなし」は正しいか?②


以前、竹中平蔵氏(元総務大臣、現慶應義塾大学教授)がある番組で(だいたい)次のようなことを言っていました。

「1番新しい大学の医学部は、1979年に作られた琉球大学の医学部で、その後、36年間、医学部の新設はない。これは既得権益を享受する側の抵抗によるものだ。医者不足が指摘されていて、医者になりたい若者も大勢いるのだから、規制は緩和しなければならない。」

医療サービスのように公共性が高いものについては、確かに質の担保が必要ですから、おいそれと市場原理に委ねるべきではないという考え方はありますが、その一方で、いわゆる士業については、供給を制限することで自らの利得を守ろうとしているのではないか、との指摘は以前からあります。


さて、前回は次のことについて、確認しました。

・デフレは、「潜在GDP>実際のGDP」の状態である。

・潜在GDPとは、労働力や資本(機会・設備)といった1国内の生産要素をフル活用した場合に実現できる総供給である。

・総供給(総生産)以上のGDPは実現しない。

一方、成長政策とは、GDPの長期的な成長を目標とし、生産の量(や質)を高める政策ですから、「総供給の能力(=潜在GDP)を上げるための政策」になります。GDP(国内総生産)の上限は総供給(総生産)なのですから、成長戦略重視派はそれを上げようと言うわけです。それはそれで十分に理解できます。

「潜在GDPと実際のGDPの差」は、GDPギャップと言われます。「潜在GDP>実際のGDP」の場合は、「総供給>総需要」でデフレ圧力が生じますので、デフレギャップと言う場合もあります。

現在(2015年度)時点で、GDPギャップ(潜在GDP-実際のGDP)は、約10兆円程度と言われています。つまり、「日本全体で生産要素をフル活用できていない」「総需要が総供給の能力に追いついていない」状態なわけです。


ちなみにGDPギャップは、2011年の東日本大震災後には、20兆円弱程度まで拡大し、第2次安倍政権初期には5~7兆円程度まで縮小しました(その後、2014年度の消費税増税などで拡大)。

ここで成長戦略重視の論調に直感的に違和感があるのは、「潜在GDP>実際のGDP」の状態で、潜在GDPを上げても総需要の増加が伴わなければ、GDPギャップが拡大するだけではないか?ということです。

確かに成長政策(成長戦略)の具体的な内容は、自由化・規制緩和ですから、その結果、イノベーションが生まれ、新しい産業が誕生することで、新たな需要や雇用が生み出される可能性はあります。また、規制緩和により、インフラサービスの供給効率が高まったり、法人税軽減で、企業の国際的な競争力が高まったりといったこともあるでしょう。

一言で成長戦略と言っても、識者によって「民間活用」であったり「イノベーション」であったりと、イメージするものが異なっているように感じます。少なくとも「現在、明らかに供給効率が悪いもの(先述の医療問題など)」と「今以上に供給効率を上げたほうが望ましいもの」については、短期的な問題と中長期的な課題という観点において、明確に識別する必要があるのではないでしょうか。


「現在、明らかに供給効率が悪いもの」については速やかに手を打ったほうがよいと思いますが、「今以上に供給効率を上げたほうが望ましいもの」については、まずは供給能力の拡大が先にある以上は、少なくとも短期的にはGDPギャップの縮小にはつながらないのではないかという印象は拭いきれないというのが私の印象です。
(つづく)
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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