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リバース・イノベーション②

前回、リバース・イノベーション(途上国で生まれたイノベーションを先進国に逆流させること)の9つのポイントを取り上げました。これには、企業がイノベーションを推進するための普遍的なテーマが含まれます。

 

 

共食いを恐れない

 

既存のリーダー企業が破壊的な次世代技術の開発に乗り遅れてしまい、その結果、次世代技術が普及すると、衰退してしまうことが見られます。代表的な理論に、イノベーション・ジレンマがあります。

 

その理由の1つとして、カニバリゼーション(共食い)があります。下手に次世代技術が普及すると、既存技術が衰退してしまいドル箱を失いかねないからです。かつてソニーが薄型テレビに出遅れたのは、ブラウン管テレビのトリニトロン技術に圧倒的な強みがあったからだと言われます。

 

カニバリゼーションに対する答えは、至ってシンプルです。「自社がやらなくても、どうせ他社がやる」です。乗り遅れる前に手を出すしかありません。イノベーション・ジレンマを克服するリーダー企業は、既存技術と、破壊的な次世代技術の両利きで開発を行っています。

 

新興国でのイノベーションでも同様です。他社が新興国でイノベーションを起こし、それを先進国で展開するようになってから追随しようと思ってももう遅いのです。

 

また、カニバリゼーションを起こすような製品は、往々にして、それを相殺する効果を伴います。そうした製品が新しい消費を誘発するからです。超低価格によって、高級モデルには決して手を出さなかった人々の需要が掘り起こされます。

 

たとえば、新興国で開発された低価格の小型音波診断装置の新規顧客は、予算がある大型病院ではなく、それまで高額で手が出せなかった小規模な診療所や開業医でした。

 

また、先進国の新規需要の喚起という効果もあります。タタ・モーターズのナノのような超低価格自動車は、先進国のあまり所得が高くない層にも受けるのではないでしょうか。

 

 

カスタマイズ化でごまかさない

 

先進国メーカーは、往々にして先進国での製品から機能を省いた低価格製品を新興国で展開しようとします。つまり既存製品のカスタマイズです。

 

しかしながら、「新興国でイノベーションが生まれる理由①②」で触れたように、新興国の事情は先進国とはまったく異なるものです。よって、ゼロベースでのイノベーションが求められます。

 

 

■独立したチームを設ける

 

先に触れたように、新興国でのイノベーションは、先進国の製品を代替する可能性があります。よって、現在、組織内で幅をきかせている既存技術の部門からの抵抗が予想されます。

 

新興国でのイノベーションを推進するためには、既存部門から完全に独立したチームを編成する必要があります。既存部門内にチームを設けると、潰されてしまいます。

 

しかしながら、ただ単にチームを独立させると、既存部門の疑心暗鬼を招いてしまいます。また、ミッションの成功のためには、チームは必要な支援を既存部門から得るしかありません。

 

よって、経営トップが新興国でのイノベーションに強くコミットし、既存部門がチームを支援することを義務づける必要があります。

 

このような取り組みは、もちろん、破壊的なイノベーションの推進でも求められます。

 

 

【参考】

『リバース・イノベーション』ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル著 ダイヤモンド社

『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン著 翔泳社

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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