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ベスト&ブライテスト

「ベスト&ブライテスト」とは、「最良の、最も聡明な人々」という意味で、ニューヨーク・タイムズの記者デイヴィッド・ハルバースタムによる書籍のタイトルです。

これは、1960年代のケネディからジョンソン時代に、誰も深入りは望んでいなかったベトナム戦争に、なぜアメリカはのめり込んでいったのかを描いた政権内幕劇です。当時の政権スタッフは、ハーバードやMITといった超一流大学卒(教授)のエスタブリッシュメントで固められていました。

それにもかかわらず、望んでもいないし、その後、何ら成果を得られないと分かったにもかかわらずベトナムへの派兵を続け、ついに最大で54万もの兵力を投入してしまったのです。アメリカ政治史としてのみならず、組織論(組織の病理)を考える上でも示唆に富む本です。

集団(組織)による浅はかな意思決定を集団浅慮といい、グループシフトもその一例です。

集団浅慮は、具体的には①他の集団よりも自分たちの意思決定が勝るはずだという自信過剰による意思決定、②外部のことに耳を傾けない閉鎖的な意思決定、③集団内部での同調の圧力による意思決定のいずれか(あるいは複数)の形態をとります。


③は、「必要以上に集団内の軋轢を避けるために反対意見を言わない」「(本当は少数意見が主導しているのに)メンバー全員で意思決定しているという幻想」「集団内の反対意見に対する同調圧力(意見に従えという圧力)」といったことです。

このような集団内部の同調圧力については、アッシュの実験が有名です。まず7~8名の被験者(大学生)から成るグループを編成します。被験者はあるカードに書かれた1本の直線を見せられます。次に別のカードに書かれた3本の直線を見せられ、最初に見たカードの直線と同じ長さの直線をみんなの前で発表させます。正解は誰でも見れば分かるもので、正答率は99%以上でした。

次にグループの1人を除いてサクラを仕込みます。サクラたちには予め誤答を被験者よりも先に言うよう指示されています。サクラたちが明らかに誤りの直線を選びつづけると、(単に正解を言うよう指示された)被験者の答えはその影響を受けるのかを調べようとしたわけです。

結果は、驚いたことに被験者の約35%が(サクラに合わせる形で)誤ったものを正解としました。みなさんもグループ討議などで順番に意見を言うよう求められると、なかなか反対の意見を言いにくいという経験はあるでしょう。

「ベスト&ブライテスト」たちも、このような集団浅慮に陥っていったと考えられます。もともとエリートであるという自負、強固な反共姿勢を取らなければ弱腰と思われてしまうという政治的プレッシャー、一度廻り始めた歯車に異を唱えられないという雰囲気が彼らを泥沼のベトナム戦争に埋没させていったのです。

【参考】
「経営組織」金井壽宏著 日本経済新聞社
「組織行動のマネジメント」スティーブン P.ロビンス著 ダイヤモンド社
「ベスト&ブライテスト〈上・中・下〉」デイヴィッド ハルバースタム著 二玄社
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
「中小企業診断士のための経済学入門」※絶賛在庫中!
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