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ルール・チェンジャーの戦略④(既存企業のルール・チェンジャーへの対抗策1)

これまで既存企業に挑むルール・チェンジャーの4つの戦略について見てきました。それでは既存企業はどう対抗すればよいのでしょうか?既存企業の守り方は、ルール・チェンジャーの4類型と基本は同じです。

 

ただし自分たちの事業領域に入ってきた新興プレイヤーと同じやり方をしても上手くいきません。なぜなら、彼らは既存のビジネスモデルを知った上で、それを壊す、あるいは逆襲できないようなやり方をしてくるからです。

 

そのため、相手の戦い方と同じボックスに入るやり方は得策ではないと考えられます。これまでの自社の強みやビジネスを尊重しながら独自の対抗策を考えることになります。


既存企業のルール・チェンジャーへの対抗策 出典:DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー20144月号デコンストラクション3,0

 

■プロセス改革型への対抗策

 

バリューチェーンを再構築することで挑んでくるプロセス改革型には、自社の強みを失わず、バリューチェーンを再構築して強化する方法があります。

 

たとえば野村證券は、株式売買手数料を下げずに、ネット証券と戦っています。ネット証券のように手数料を安くしてもコストで不利を強いられるため、デイトレーダーのような低価格を求める人はネット証券に任せて、自社の優良顧客が離れていなないように工夫しました。

 

優良顧客のネットへのニーズは手数料の安さではなく、時間外(夜間・土日)でも株価を見たり、取引が出来るたりすること。そこで野村證券は、店頭あるいは営業マン対応が基本の自社顧客へ、追加的なサービスとしてネット取引を提供したのです。

 

コマツのKOMATRAXもプロセス改良型の例です。KOMATRAXとは、建設機械の情報を遠隔で確認するためのシステムで、世界中で導入されています。さらにKOMATRAXから送信される車輌情報は無償で顧客に提供しています。コマツが建機をユーザーに販売し、販売代金で儲けるという仕組みは何も変わっていないですが、新興国の価格訴求の競争相手に対して、付加価値で勝負しています。

 

ユーザーの建機使用状況をリモートで監視することで、顧客の建機の使い方、あるいは消耗部品がいまどのような状況にあるのか予測し、故障する前に整備や部品の交換を勧めます。結果として、機械の故障している時間が短くなり、顧客の建機稼働率が上がります。そのため、建機本体の価格が多少高くてもコマツの建機を使ったほうが、コストパフォーマンスがよいのです。

 

また、これまでの単品売りだと、ユーザーも競合会社の製品とコマツを混ぜて使うことが多かったですが、このシステムを導入した場合、システムなので2社以上の同様のシステムを入れることは面倒な上に二重投資になります。そのため、ユーザーがコマツ1社に切り替えるという事例も多いようです。

 

プロセス改革のフレームワークで対抗戦略を考える場合のポイントは、自社の都合ではなく、顧客視点で自社のバリューチェーンを見直すことにあります。

 

 

■市場創造型への対抗策

 

「顧客の気づいていない価値を具体化する」市場創造型への対抗策としては、自分たちの既存のビジネスモデルを活かしながらも、環境変化に対応して新しい製品やサービスを提供する方法が考えられます。あるいは、新興プレイヤーと同じ土俵で戦わないように、市場そのものをずらしてしまう方法もあります。

 

ヤマト運輸は他社に先駆けて、多くの市場を創造してきました。その代表例がクール宅急便です。従来型の宅配事業は日通、佐川急便、日本郵政などが参入し、価格競争に陥っていました。そうした中、宅急便とまったく同じビジネスモデルを使いつつも、温度を管理することで、鮮度管理が重要な食品などを送ることができるようにしました。

 

これは単に冷蔵庫で配達するだけでなく、集荷から貯蔵、配送までをすべて温度管理しなくてはならず、他社に対する参入障壁となりました。さらに産地直送を可能にしたことで、地方農家や漁協などに新しいビジネスモデルを提供することになりました。

 

現在では他社も追随していますが、ヤマト運輸は同様の方法で、「宅急便コレクト」やキヤノンと提携した「らくらく修理便」などの新サービスを打ち出すことで、業界リーダーの地位を安定的に保っています。

 

また語学教教室が、語学そのものを教えるのではなく、英語を題材にしてグローバル・ビジネスマンを育成しようというビジネス教育に乗り出すのは、戦う土俵を単なる語学からビジネス教育に移すことで、低価格競争から逃れるためと考えられます。これは土俵をずらした戦略といえます。

(つづく)

 

【参考】

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー20144月号デコンストラクション3.0』ダイヤモンド社

 

 


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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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