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原油安だとデフレになるの?(代替効果と所得効果)

予定を超過し、引き続き物価の話ではありますが(おそらく次回も)、今回は、ミクロ経済学の知識を使って検討したいと思います。

日本銀行の会見を見ると、物価上昇率目標(2%が目安)が達成できない理由として、原油安の影響を挙げることが多いようです。確かに2014年初夏から2015年初頭にかけて原油価格はほぼ半減し、その後、反転したものの、7月以降、再度下落しています。

経済学では、価格効果という言葉があります。価格効果とは、「ある財(モノやサービス)の価格の変化が、その財や他の財の需要量(消費量)にどのような変化を与えるか」を見たもので、多くの場合は、「ある財の価格が上がれば(下がれば)、その財の需要量は減少(増加)する」ということになります(価格が変わらなかった財は、それに限らない)。もっとも、「価格が上がっても(下がっても)、需要量がほとんど変わらない」財もあります。

さらに、価格効果は、代替効果と所得効果に分解することができます(スルツキー分解)。

価格が低下した場合を想定して、3つの言葉を定義すると、次のようになります。単純化のために、A財とB財の2つを考え、所得は一定の下でA財のみ価格が低下したとします。

・価格効果
A財の価格が低下すると、A財やB財の需要量はどのように変化するか。

・代替効果
価格低下により、A財が割安になると、A財の需要量はどれくらい増え、(価格は変わらないが、相対的には)割高になったB財の需要量はどれくらい減るか。

・所得効果
A財の価格が低下すると、実質的に生活負担が軽くなり(実質所得の上昇)、どれくらいA財やB財の需要量が変化するか。
※価格効果=代替効果+所得効果


さて、ここで原油安が我々の消費活動にどのような影響を与えるか考えてみます。単純化のために「ガソリン」と「その他の財(原油を使わない財)」の2つ想定します。


<代替効果>

「ガソリン」の価格が下がれば、「ガソリン」は割安になり、消費量は多少増加するかもしれません(代替効果)。

ただし、いくら割安になったからといって、「ガソリン」を大量に買い込むとは考えにくいので、代替効果による「ガソリン」の消費量の増加は限定的かもしれません。その結果、割高になった「その他の財」の消費量も多少減るかもしれませんが、おそらくそれほど変わらないのではないでしょうか。


<所得効果>

一方、原油安になれば、我々の生活負担は確実に軽減され、懐事情は改善されるでしょう(実質所得の上昇)。ガソリン代を節約できるからです。節約できたので、多少は「ガソリン」の消費量を増やすことはあるかもしれませんが、やはりあまり買い込んでも仕方がないので、それほど変化はないでしょう。

ただしガソリン代を節約できれば、その分、「他の財」の消費に充てることができます。たとえば、車を買い替えたり、旅行に行ったりすることもできるでしょう。このように「ガソリン以外の財」の中には需要が増加するものもあるでしょう。


ここまでが、スルツキー分解の話です。これとは別に、一般的には、ある財の需要が増加すれば、その財の価格は上昇します。そうなると、上の例では車や旅行は需要が増加し、価格が上がることになります。

少しややこしくなりましたが、結論はシンプルで、「原油安になれば、(確かに一時的には物価の下落にはつながるが)実質所得の増加を通じて(おカネが節約できるので)、他の財の需要の増加と価格の上昇をもたらし、物価全体は、結果的には変わらなくなる」と考えたほうがいいでしょう。(つづく)

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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連絡先:rsb39362(at)nifty.com
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