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GDP600兆円は実現可能か?

安倍首相は、現在の名目GDP約490兆円を2020年までに600兆円にすることを目標に掲げましたが、おそらく多くの方が実現不可能と思われているのではないでしょうか。名目GDPを600兆円にするためには、年平均で約3.4%の名目GDP成長率が必要になるのですが、1990年から2012年度の日本の平均成長率は約0.3%ですので、確かに実現は極めて困難に思えるでしょう。


■名目と実質


マスメディアでの報道や論調を見ると、「名目GDP」と「実質GDP」を混同している、あるいは区別できていないケースが散見されます。まずこの点から確認していきましょう。

名目とは、いわば額面の値のことです。たとえば賃金を例にとると、みなさんの給与明細に書かれている金額は名目の賃金です。税金や社会保険料などを除いた手取りではありませんから注意してください。

一方、実質とは、名目から物価上昇率を割り引いたものです。たとえば額面の賃金(名目賃金)が一定でも物価が上昇すると、実質的な賃金は目減りします。

名目と実質の関係を成長率で考えると、次のような関係が成立します。

 実質成長率=名目成長率-物価上昇率

GDP成長率で考えると、次のようになります。

 実質GDP成長率=名目GDP成長率-物価上昇率
 ∴名目GDP成長率=実質GDP成長率+物価上昇率


こうして考えると、名目GDP成長率3.4%を達成するためには、実質GDP成長率と物価上昇率で分担すればよいということになります。


■年平均で約3.4%の名目GDP成長率は達成可能か?

日本の場合、実質GDP成長率を平均3.4%で廻すことは極めて難しいでしょうが、リーマンショックからの回復が見られた2010年度以降の他の先進国並みの成長率である1.5%であれば十分に可能です。

<2010年度~2014年度の実質GDP成長率の平均値>
アメリカ:約2.2%
イギリス:約1.5%
ドイツ:約2.1%
フランス:約1.2%
ノルウェー:約1.3%
フィンランド:約0,7%
スウェーデン:約2.5%
韓国:約3.9%
台湾:約4.7%

一方、物価上昇率ですが、代表的な物価指数である消費者物価上昇率の推移を見ると、リーマンショック後の大幅な物価下落を除けば、先進国ではおおむね2%前後で推移しています。

アメリカのFRB(連邦準備制度)やユーロのECB(ヨーロッパ中央銀行)、イギリスのイングランド銀行などの主要中央銀行では、2±1%の物価上昇率を目標としていますが、こうした国際標準を受けて日本銀行でも遅まきながら2013年度に物価上昇率目標2%にコミットしたわけですから、そのとおり実現させればよいのです。

まとめると、実質GDP成長率を他の先進国並みの1.5%、物価上昇率も同様に国際標準である2%にすれば、名目GDP成長率は3.4%を超え、2020年度には名目GDPを600兆円にすることは可能だということです(注)。


たしかに実現のためには、まともな経済政策(金融追加緩和、補正予算など)が必要ですし、消費増税を実施すれば、確実に実現不可能となります。

しかしながら、1990年から2012年の先進国の名目GDP成長率は平均で3.7%程度ですから、現時点ですでに不可能と決めつけるのは、もはや日本は並みの先進国と同じことはできないというのとほぼ同義であり、それは過度な悲観論ではないでしょうか。


注:
ただし、なぜか政府が掲げる名目3%目標の内訳は、実質2%、物価上昇率1%になっていて、日銀の目標物価上昇率2%との齟齬が見られる。

【参考】
統計局ホームページ/世界の統計2015 3-5 国内総生産の実質成長率
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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