ストーリーを経営に活かす⑨
■ストーリーの例
商品やサービスのマーケティングで使う客を主人公としたストーリーの作り方は、以前取り上げたペルソナ、カスタマージャーニー、シナリオなどと同じです。
「周囲の人と共有しフィードバックが得られるスケジュール管理のためのアプリ」を例にしてみます。
<越境>
ユキはインターネットメディア会社に入社して3年目になり、一人前に仕事を任されるようになってきた。学生時代のまましばらく紙の手帳を使っていた。
<危機>
ミーティングの機会も増え、しかもミーティングの日程がコロコロ変わるようになった。先日、手帳が手元に見つからずついうっかり変更し忘れ、ミーティングをすっぽかしてしまったことが2回ほどあり、上司や同僚から冷ややかに見られてしまった。
<成長>
そんなとき、学生時代の友人からモバイルでも管理できるスケジュール管理サービスを薦められ、変えてみることにした。変更記入の手間も楽になり、スケジュール管理がしやすくなった。この管理サービスは、自分のスケジュールを友達にシェアして、友達からコメントがもらえる機能がある。スケジュールをシェアすると、深夜残業の予定に対して、早速友達から励ましのメッセージが届いた。残業はちょっと憂鬱だったけど、友達からの言葉で前向きに。商品開発ミーティングの予定に対しては、その領域に詳しい友達から参考情報が届いていた。
<勝利>
早速ミーティングで上司や同僚に薦めると、みんな「いいね」と言ってくれた。チームのメンバーの管理やフィードバック、サポートにちょうど良いといいことになり、上司が管理部に全社的な導入を提案するという。ユキの社内での評判があがった。
■ストーリー表現の注意点
ストーリーを作る際には、マーケティングのメッセージを「客観的な情報」ではなく、「あなたに関係する情報」に昇格させる魔法が必要です。物語の世界に消費者を招き入れ、自分があたかも主人公であるかのような意識を持たせること、消費者にとって「自分の存在」を見出す表現であることが必要です。
【参考】
「事例でわかる物語マーケティング」山川悟著 日本能率協会マネジメントセンター