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人は固定的な費用には目を配らない

パブロ・ピカソにまつわるこんな話があります。ピカソが公園にいると、女性が近づいてきて、自分の絵を描いてほしいとせがみました。ピカソはしばらく女性を観察し、たった一筆で素晴らしい絵を描きました。

「私の本質を一筆でとらえてくださったのね。驚きましたわ!いかほどお支払いしましょうか?」

5,000ドルです」とピカソは答えた。

「なんですって、そんなに?ほんの数秒でしたのに!」

「いや、そうじゃありません。これまでの全人生と数秒かかったのですよ」

 

2分でカギを開けて100ドル請求する錠前屋と、1時間かけて同じ100ドルを請求する錠前屋とでは、どっちがトクでしょうか。時間が長いほうが労力がかかっていると考え、多くの人が後者のほうが得だと考えるかもしれません。しかし前者のほうが腕は確かですし、後者の腕の悪い錠前屋によって自分の時間を1時間余計に奪われているのですから、それは誤りです。

 

私たちは価値判断を下す際に、労力をもとにする傾向があり、専門性や知識、経験に対する関心を見過ごしがちです。これは限界費用(その場で追加的に発生する費用)に偏重し、固定費を軽視しているという言い方もできます。専門性や知識、経験には莫大な初期投資がかかっていますから、固定費です。たとえば専門性の高いサービスには、そのノウハウを獲得するための莫大なコストがかかっています。よく弁護士の費用が高すぎるといった話がでますが、彼らからすれば、資格取得やノウハウ獲得には莫大なコストがかかっていますから、その後の高い報酬でそれを回収しようとするのは自然なことです。

 

製品と異なり、サービスという実態が伴いにくい仕事をしていると、相手も「ちっとくらいタダで教えてくれてもいいだろう」と考えがちですし、こちらもなかなか請求できないという雰囲気がありますが、本来はそれまでにかかった固定費を回収するような料金を請求するべきでしょう。製造業が機械設備を回収するのと同じなわけですから。

 

しかし相手がなかなか応じないということであれば、1つ1つの仕事にいかに労力をかけたかをアピールするしかないかもしれません。よく無駄に厚い資料や提案書を目にしますが、顧客に価値をアピールするためには、それはそれで合理的なことなのかもしれません。

 

いずれにせよ、1つ1つの仕事に対し、どれくらいのコストがこれまでにかかっているのかを開示しなければ顧客は妥当な報酬を払わないということは理解しておいたほうがよいでしょう。

 

【参考】

『アリエリー教授の「行動経済学」入門-お金篇-』ダン アリエリー、ジェフ クライスラー 著 早川書房

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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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