部下がプレッシャーで潰されないための期待のかけ方
■期待されれば伸びるというわけでもない
一般的にいえば、人は期待されるほど伸びると言われます。しかしながら、周囲の期待がプレッシャーとなり、押しつぶされてしまうケースもあります。
エリートの親から過剰な期待をされた結果、途中で道を外してしまった、担当者としては優秀だったけれど昇進して管理職になったらから回りになってしまった、現場での結果が認められ、花形部署に移動したものの活躍できなかったといったケースはよく見られます。
同志社大学の太田肇教授は、周囲からの期待のプレッシャーを次の式で表しています。
プレッシャー=(認知された期待-自己効力感)×問題の重要性
認知された期待:本人が知覚している周囲からの期待の大きさ
自己効力感:自分ならできるという感覚
問題の重要性:期待に応えることが自分にとって重要なことかどうかの程度
自分が感じている周囲の大きさが高く、それに応えることができる自信がなく、期待に応えることが重要だと感じているほど、周囲の期待はプレッシャーとなります。
■期待すると同時に自己効力感を高めさせる
この式に従えば、単に「君には大いに期待している」と言って部下を励ますことは、部下にとってプレッシャーを高めてしまい、逆効果になりかねないことになります。
よって、同時に自己効力感を高めるような言い方をする必要があります。具体的には「君の能力があれば努力すれば達成できる」というような言い方です。
「問題の重要性」については、それを下げさせるような言い方は難しいかもしれません。「この仕事は大したものではないから気にしなくていい」ということは、「君には期待していない」と捉えられかねないからです。しかし、「仮にこの仕事が上手くいなくても、君のキャリアの致命的なダメージにはならない(再チャレンジの機会はある)」というような言い方は「問題の重要性」を軽減させる上手い言い方であると思います。間違っても「君の今後のキャリアがかかっているので、全力でやるように」という言い方はするべきではないでしょう。
【参考】
『「承認欲求」の呪縛』太田肇著 新潮社