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10%への消費税率の引き上げは本当に決まったことなのか?

■与党内での軽減税率の合意

自民党と公明党の与党内で、12日、2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に導入する軽減税率について、対象を「酒類と外食を除く食品全般」とすることで大筋合意したとのことです。

減税規模は約1兆円とのことで、当初、自民党が強く主張した4千億円を大きく上回る結果となり、公明党案を受け入れたとの見方が大勢です。消費税率1%ごとに約2兆円の税収増が見込まれており、2%増税で約4兆円の税収増、その中から1兆円の減税を行うということなので、かなり思い切った合意と言えます。

■まったくおかしな軽減税率の議論

しかしながら消費増税の低所得者層の痛税感を和らげるために軽減税率を行う、あるいは軽減税率導入の代わりに新たな税収の確保(増税)を検討するというのでは、まったくの本末転倒と言わざるを得ません。最初から消費増税を見直すなり、増税率を下げるなりすればよいというのが私の考えです。

そもそも消費税は逆進性が高い(低所得層に対してより痛税感がある)のと同様に軽減税率の恩恵にも逆進性がある(高所得者のほうがより得をする)のですから、軽減税率を云々しているだけバカバカしい話でしょう。

■本当に消費増税は決まっていることなのか?

残念ながら日本では消費税問題は経済問題ではなく政治問題です。まず消費税の段階的引き上げは、2012年度の民主党政権末期の3党合意(民主野田首相、谷垣自民党総裁、山口公明党代表)で決まったことです。つまり現在の与党と野党第1党が増税に賛成であること、アベノミクスとは関係がないことに注意する必要があります。

安倍政権では昨年末の解散・総選挙で勝利したことを受けて消費税の10%引き上げを延期しました。消費税引き上げは決まったことという見方が一般的ですが、識者やジャーナリストの中にはまだ分からないという見方をする人もいます。ここで消費税引き上げに関する政局の見方をいくつか紹介してみましょう。

■増税は予定どおりとする見方

・自公民の3党合意で決まっているのだから予定どおり引き上げるに決まっている。

・昨年の総選挙において安倍首相は「今度は景気条項を設けない(悪くても税率を引き上げる)」と明言している。

・軽減税率の話に世間の話を向かせることで、消費税を既定路線化して反対意見を言わせないようにしているのではないか。
・現政権下で2回延期することは考えにくい。

■増税を見送る可能性があるとする見方

・安倍首相はそもそも増税派ではなく景気回復による税の増収を優先する立場(いわゆる上げ潮派)であり、第1次政権下で増税をしたこともなければ検討したこともない。第2次政権下でも「社会保障のためには絶対消費税を引き上げなければならない」というよりは「既に決まったことだから引き上げる」という趣旨の発言が目立つ。

・現に安倍首相は昨年に一度10%への引き上げを延期するという判断をしており、増税推進派とはとても言えない。

・確かに安倍首相は、当初は「今度は景気に関係なく引き上げる」と言っていたが、今年の春頃から「リーマンショックのようなことがあれば、もちろん別だ」とトーンが変わっている。

・どのみち公正に軽減税率の対象品目を決めることなど不可能だし、流通サイドの手間も膨大であり、軽減税率案は潰れる可能性が高い。その場合、公明党の顔を立てるためには、軽減税率をやめる代わりに消費税の引き上げをやめるか延期するしかなくなる。

・自民党税制調査会の会長をごりごりの増税派の野田氏から宮沢氏に代えたのは、軽減税率を進めたい公明党への配慮とともに、増税延期のための布石ではないか。

・安倍首相は5年を目処に名目GDP600兆円を達成するとしている。8%に上げたら景気が減速した経験からも、消費税を引き上げればその目標が不可能になることくらいわかっているはずだ。

・安倍首相は8%への引き上げ後に「経済財政諮問会議のメンバーが増税しても影響ないと言ったから引き上げたのに、このざまだ。」と周囲に語ったとされる。

・もともと消費増税を言った手前上、民主党側から消費税延期・凍結を言い出すことはできない。来年夏の参院選あるいはダブル選で与党側から消費増税の延期を争点にすれば民主党はせいぜい追認しかできず(増税延期に反対すれば必ず負ける)、与党は大勝できる。

・ただし9日に民主党枝野幹事長が3党合意は破棄されたのも同然とし、消費増税に反対に回る可能性を示唆した。そうなると与党は選挙対策のためにもやはり増税延期を打ち出すしかないのではないか。

■結局は政権維持に有利なように消費税引き上げの判断をするのか?

私自身は消費税が政治問題化している(与党内でも増税派が多数を占めている)ことから、引き上げ延期にあたっては、(昨年末 のように)ダブル選挙に打って出るような思い切ったことをやらないと難しいように思います。

安倍首相自体は増税に乗り気ではないように思えますが、政治的な安定性の確保を優先して最終的な判断をするのではないでしょうか。
 
さて次回から複数回に分けて消費税をめぐる議論について、私なりに整理してみたいと思います。

繰り返しになりますが、私は消費増税は反対でその立場でこれまで出てきている様々な議論を整理していきます。消費増税に賛成(あるいはやむを得ない)と考えている方も、このような見方もあるのだなと少しは参考になるかもしれません。
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プロフィール

三枝 元

Author:三枝 元
1971年生まれ。東京都在住。読書好きな中年中小企業診断士・講師。資格受験指導校の中小企業診断士講座にて12年間教材作成(企業経営理論・経済学・組織事例問題など)に従事。現在はフリー。
著書:「最速2時間でわかるビジネス・フレームワーク~手っ取り早くできる人になれる」ぱる出版 2020年2月6日発売
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